北極星 vol.2

オリジナルイオンの話

秘預言によって自分の余命を知ってしまったイオンは、唯一心を許していた、神託の盾騎士団の主席総長であるヴァンにも、この所気持ちを閉ざし気味であった。
(この年齢では無理も無い。)
ヴァンはそんなイオンの後姿を見ながら思う。やはり秘預言で死亡するはずのファブレ公爵家嫡男“ルーク・フォン・ファブレ”には、それを回避する為の“代わり”を作成し、本人には新しい役割と居場所を与えてやった。
しかし、イオンの場合には死亡原因が本人の病だ。それは“代わり”で回避出来得る問題ではない。


(しかしこのままではあまりにも、この年若い導師に救いがない。天涯孤独なあの少女を彼に引き会わせるか。)
ヴァンはつい先だって、ホド戦争によって故郷のフェレス島も肉親も失い、ライガによって育てられていた少女に出会った。
少女は一緒に育った獣達と心を通じ合わせる能力を持っていた。自分に似た境遇の彼女を哀れに思ったのと、その能力を見込んで、ヴァンは自分の元に、2頭の獣を従えた彼女を引き取ることにしたのだった。

“アリエッタ”と名付けられた、実年齢にしては大分幼い印象のするその少女は、言葉こそうまくしゃべれないが、純粋な心の持ち主であるようにヴァンには感じられたからだ。
「彼女の素直さが導師の固い心を少しでも和らげてくれるのならば。」
イオン様、と声をかけるとヴァンはある部屋へイオンを伴った。

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