DropsⅢ vol.2

ED後の話

男は目を見開く。
「・・・やっと出てきやがったか。」
その声は答えない。
「お前、俺に何度同じ事を言わせるんだ。」
返事はない。
「お前は俺の片割れなんだよ。俺がそれを認めたんだ。俺は自分が本物の“ルーク”だ、なんてことは始めから解ってるし、何も諦めてもいねぇーつんだよ。」
すぅ、と男は一息つく。
「だが、これからの“ルーク”は俺一人じゃねぇ。お前がいて、お前の記憶があって初めて“ルーク”になれるんだ。 俺がそう思ってんだからいいんだよ。
お前は俺と一緒に生き続ければいいんだ。」


でも、俺は・・・。
やっと返事が聞こえてきた。
「・・・またお前はっ!!」
男はまた声を荒らげる。
「お前はどうしていつもそうなんだ!」
もう一人の声の主は、再び黙ってしまったようだ。
くそっ!と舌打ちし、それから男は、恐らく他人には気付かれないほど、ほんの少しだけ悲しげに顔を歪めてつぶやいた。
「どうしてお前は、俺の気持ちを解ろうとしない─。」

それきり、男に“ルーク”と呼ばれた者の声は聞こえなくなった。
思いが伝わらないもどかしさに加え、自分を理解しようとしない相手に、改めて腹立たしさが募る。
「・・・俺はあいつらに、何と言えばいいんだ。」
自分が持つ“ルーク”の強い思念が、俺を俺でなくしてしまう。
さすがに自分でも混乱してくる。
俺はあいつじゃない。あいつの代わりは俺には出来ない。

アッシュは思う。
俺の身体を再編成した“素”は、元はあいつの身体だった物も含まれている。そのおかげで俺はこうして生きている。
だからこそ、あいつにも堂々とこの身体を使って欲しい。
むしろそうしてもらわなくては、自分の気持ちが済まないのだ。
あいつには、どうしてそれがわからない。
遠くからかすかに歌声が聴こえてくる。
「・・・今ここにいる俺は、俺だ。俺でしかない。」

Page Top