手紙 本編vol.2

ED前ガイの話

「─ん?ガイか?」
「─おや?」
聞きなれた声に出迎えられ、ガイは一瞬棒立ちになった。
えー!どうして陛下の声がするんだ!しかもジェイドまでいるじゃないか!
「・・・・・・。」驚いて返す言葉に詰まっていると、
「・・・さては、俺と同じく会議をサボったな。」
そう言って、ニヤニヤしてこちらを見つめているピオニーの横で、
「やれやれ。仕事嫌いの人達ばかりで困ったものですね。」
と、眼鏡を光らせたジェイドが大げさに溜息をついた。


「いや、あの、これは・・・」
言い訳を一生懸命探していると、ピオニーがはははと笑って言った。
「まぁ丁度いいと言えば丁度いいんだがな。ガイ。頼みがある。」
ピオニーがこういう時は大抵、突拍子もないはた迷惑な頼み事である場合が多いので、ガイがぎょぎょっ、と怯えていると、
「実はなぁ」
と返事を待たずに、ピオニーは切り出した。
「ブウサギ達が最近どんどん活発になってきて、知っての通り、俺の部屋も荒れ放題だ。まぁ俺はそれでも構わないんだが、部屋を片付けるメイド達にどうにかしてくれ、と泣きつかれてなあ。」
女性の涙には俺、弱いだろ?などと一人でデレデレしながら、ピオニーは説明を続けている。
「で、ジェイドに譜術でどうにか出来ないかと頼んでみたんだが、これがまた、自分は第七音素譜術師じゃないからダメだ、とか、術の威力が最近弱まっているから、これからは極力使わない方向だから違う方法を考えろ、とか、いっその事部屋からブウサギ達を出せ、とか意地悪い事ばかり言うんだぜ~。ひどいだろ?」
「・・・・。」ガイは無言になった。
「・・・・。」同じく無言になったジェイド。
「そこで、だ。ガイ。お前さんに譜業で音盤の聴けるオルゴールを作ってもらって、ブウサギ達のリラックスするようなBGMを流したらどうかと思った次第なんだ。ガイ。出来るだろ?」
「出来ない事はないですが・・・。」
「よし!決まりだ。それでいこう。」
1から作成するので時間がかかりますよ、と言おうとしたガイの言葉も聞かずに、ピオニーは勝手に結論づけた。
こういう時のピオニーは相手に有無を言わせない。

「いや~助かりましたガイ。陛下の我侭に私もほとほと困っていたのですよ。すみませんが宜しくお願いしますねぇ~♪」
心底嬉しそうにジェイドが言う。
本当にこの人達は・・・。
ガイは「はぁー。」と小さく溜息をついた。
「早速だが、ガイ。すぐ取り掛かってくれ。今日の散歩はジェイドにさせるから心配するな。」
「・・・・・・。」ジェイドは言葉を無くしているようだ。
「わかりました・・・。行ってきます・・・。」
トホホとうなだれたガイと、無理やりブウサギ達の繋がれた、散歩用の綱を持たされたジェイドは、同時にピオニーの私室を出た。

「・・・ガイ。勿論付き合ってくれますよね?」
部屋の外に出るなり、ジェイドはガイに向かってニヤリとしてみせた。
「え。」
「私が散歩していないとバレたらまた怒られますから、形式上私も行きますが、糞取りなどはガイにお願いしますよ。一応これでも軍では身分が大佐なもので。大佐が糞取りでは部下にしめしがつきませんからねえ♪」
「・・・。」
普段は偉ぶったりするのを嫌うくせに、こういう時だけ使うんだもんなぁ。ほんと類は友を呼ぶとはこの事だよな、などと思いながら
「行きますよ。行けばいいんでしょ。」
とガイが投げやりに言うと、
「おりこうさんですね~♪」
とジェイドの思いっ切りの作り笑顔を見せられた。

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