Flowers~魔界の花~ 本編vol.2

ED前ティアの話

「ティア!丁度よかった。良い知らせがあるんだ。」
研究所での仕事を終えて、昔からの知り合いである研究員の研究室に立ち寄ったティアに、開口一番彼はそう声をかけてきた。
現在も彼は、すっかり改心したスピノザの下で働いている。
「喜んでくれ。第七音素を使わない、新しい治癒方法が構築出来たんだよ。これで治癒師もそうでない者も、やる気さえあれば術に頼らない技術を等しく学べるようになる!」
と言って彼は、熱くその技術の実用化に向けての概要を話し出した。
「相変わらすね。久しぶりに会ったというのに。」
そう苦笑しながら、しかし彼女は嬉しく思っていた。
新しい世界でも、人は新しい未来を創造していくことが出来る。
立ちっ放しのまま、まだ話を続けている彼に、ティアは勇気と力をわけて貰った気がした。

結局、そのまま語り続けた彼に、また来るわねと声をかけ、ティアは研究所を後にした。
「さて・・と。」と彼女はつぶやき、
「休みと言っても、何をしたらいいのかさっぱりだわ。」
と仕事漬けで気分転換の仕方も忘れてしまった自分に苦笑した。
滅多にとれないたまの休みは、部屋の大掃除や片付け、もしくはゆっくりと風呂に浸かる位しかしてこなかった。外で一体何をしたらいいのか、皆目検討もつかない。
「そうだわ。折角ここまで来たなら、オルゴール屋敷に音盤を聴きに行きましょう。」
ルークと揃えた7つの音盤の音色。
父の跡を継いだという、オルゴール屋敷の彼女と話をしながら聴くのも悪くない。
そう思いつくとティアは、職人の街シェリダンに向かった。

宿屋の西側の坂道を登ってオルゴール屋敷の扉を開いた時、そこには思わぬ先客がいた。
「ティア・・・ティアじゃないか!」
「・・・ガイ?!」
昔より少し大人っぽくなったような彼は、逆光を浴びてきらきらと透き通った金髪の髪を揺らして、ティアに駆け寄ってきた。
<vol.3へ続く>

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